(1) 計算法
・潮汐流・吹送流・海流
潮流を考慮した吹送流の基本方程式はNavier-Stokesの方程式を水深方向に積分した平面2次元長波の方程式を使用し、これらの式をADI法で差分化し、水平二次元の単層流れで流れの計算をおこなった。
・粒子拡散
流れの計算は各計算点での流速と水位の時間変動を求める手法でありEular的な流れを求める手法である。しかし、重油の拡散移動を計算するためには、油粒子をLagrange的に追跡する必要がある。そこで、流れの計算で求められたEular流場に、油粒子に相当する標識粒子を放出し、それがどのように移動していくかをLagrange的に追跡した。
格子間隔 | 15km |
地形・水深 | 日本近海海底地形図(海上保安庁) |
タイムステップ | 60秒 |
強制水位・ 位相差・振幅 | 同時潮位図より位相を決定 新潟における潮汐調和定数 |
海流流量 | 対馬海峡の断面流量の1/3 |
風向・風速 | NNW、15.6m/s(流速比較時) 天気図より新潟の朝・夕方の値を入力(1月1日〜31日)(流況再現時) |
図-1によると、重油は1月12日に能登半島の西側を北上したが、計算でも同様の結果となっている(図-2 (1))。16日(14日後)くらいに能登半島を越えたが、計算でも17日に能登半島を越えた。重油は1月21日に上越市に漂着し、22日には上越市から新潟市まで全域にかけて漂着したが、計算でも21日に上越市に漂着し、22日には新潟までの全域に分布している(図-2 (2))。また、図-2(3)を見ると、重油は新潟県沿岸全域に到達しているのがわかる。また上越市沖付近では重油がとどまっている様子がわかる。
これより、能登半島を越えてきた流れは上越市付近に集中することが確認された。これらの結果より、今回の計算で重油の流況をある程度再現できたのではないかと考えられる。
図‐1 観測結果(重油先端部の移動状況)
(1) 1月12日 (2) 1月22日 (3) 2月1日
図‐2 計算結果