建設工学課程のJABEEへの取り組み
長岡技術科学大学広報誌「VOS」(2002年10月号,No.113、pp.11)
建設工学課程では昨年度、JABEEの試行審査を受けた。JABEEといっても初めて聞く人も多いであろう。
JABEEとは日本技術者教育認定制度(Japan Accreditation Board for Engineering Education)の省略名である。
この認定制度は大学レベルにおける技術者教育の質を保証し、ワシントン・アコード等の技術者教育の国際的承認協定に対処するために発足した。
現在、大学における高等教育の品質評価、認定を行うさまざまな外部評価の動きがある。
JABEEはそのうち、大学学部における技術者教育プログラムの水準を認定し、保証するする制度である。
高専の専攻科も大学レベルの教育を行っており、JABEEの対象に含まれている。このため、長岡・豊橋の両技大を始め、
全国の高等専門学校では一般大学と同様、JABEEに対してどう取り組むかが大きな関心事になっている。
JABEEの認定制度は始まったばかりであり、準備の意味もあって、2000年度、初めて“試行”審査が始まった。
土木学会関連では2000年度の鳥取大学、近畿大学に続き、2001年度は1高専を含めた7校が試行審査の対象となった。
建設工学課程はその一つである。
JABEEでは広く、各分野の技術者教育プログラムを認定の対象とする。このため、実際の審査にあたるのは土木学会、
日本機械学会といった個別の学協会である。また、技術者教育認定といった性格から、
認定審査には民間企業などで経験をつんだ技術者も審査にあたる。
JABEE審査ではプログラムの水準を確認するために、教育プログラムが多岐にわたって審査される。
「学習・教育目標の設定と公開」「学習・教育の量」「教育手段」「教育環境」「学習・教育目標達成度の評価」
「教育改善」「分野別要件」などの項目が並ぶ。とりわけ、教育プログラムが継続的に改善されることを強く要求している。
大学におけるカリキュラムは常に改善されるべきものであり、JABEEの趣旨は大学での教育のあり方と合致する。
我々は、建設工学課程のカリキュラムの問題点を洗い出し、それを改善することを目標に掲げて、JABEE審査の準備を行い、
昨年11月19日、20日に実地審査を受けた。
全体として、建設工学課程の教育プログラムは高く評価されたが、以下のような不十分な点も指摘された。
シラバスでわかりにくいものがある。講義室、実験室などの環境に不十分なものがある。教育改善を学生にフィードバックするシステムはあるか、
1学期15週の授業の保証はあるか、などである。今、全学を挙げてこれらを改善する努力が始まっている。
試行審査後も建設工学課程では教育改善のための継続的な活動を続け、来年度での本審査の準備を進めているところである。
本学では第3年次に8割程度の高専の卒業生を編入させているので、審査員に対して編入学生の学力をどのように証明し、
納得してもらうかなど、他大学にはない苦労もある。
膨大な資料を整備し、我々の教育プログラムの長所をアピールするのは大変ではあるが、わが大学を宣伝するよい機会だと捉えている。
JABEEに認定された教育プログラムの修了生は、就職等で有利になることが予想されるなど、直接的なメリットもあるだろう。
これからの建設工学課程のJABEEへの動きに注目してもらいたい。
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