研究紹介
目次
水は私たちの生活に密着した存在です。世界の大文明が水と関わり、大河の流域で発生したことは周知の事実ですし、現代の高度化した社会もまた水なくしては考えられません。
現代でも生活水をはじめとして社会を維持するためにも大量の水が必要となっているのです。ところで、水は海水として、河川水として、また地下水などとして存在します。このような水の分布形態の違いにより、様々な水に関わる諸問題が生じます。例えば、河川における洪水や海岸における陸域の決壊などがそうです。
水工学は水に関わる諸問題を解決するための手段を提供する学問です。水工学研究室では、伝統的な水理学、河川工学、海岸・海洋工学に加え、水の一変態である雪氷をも視野に入れ、水理実験、コンピュータによる数値計算をおこなっています。
流体による固体粒子の輸送は水工学的に極めて多くの応用を伴う問題です。古典的には、河川における浮遊砂流の問題が挙げられます。河川はそのはたらきとして、洪水時に大量の土砂を流送します。その流動形態として基本的なものが浮遊砂流です。同様に固体粒子を流送する流れとして、空気中の雪粒子の輸送である吹雪の問題、空気によって運ばれる飛砂の問題があります。これらの現象の類似点を探り統一的に取り扱うために、k-ε乱流モデルを用いた数値解析手法を開発しています。
傾斜サーマルとは、周りの流体の密度より大きい物質(流体、固体)が流れることによって引き起こされる重力密度流の一種です。密度差を生じる原因として、塩分などの溶解性の場合と、固体粒子を浮遊する場合があります。後者の代表例として、厳冬期山岳地帯で発生する煙型雪崩、火山活動に伴う火砕流、海底渓谷や大規模な貯水池で発生する泥水流などが挙げられます。これらの流動を知ることは工学的、社会的に極めて重要です。本研究では、これらの流動の基礎となる固体粒子を浮遊する傾斜サーマルの流動機構を実験的、理論的に解明しています。また、実験では硫酸バリウム混合水を用いて室内実験をおこなっています。これらの実験結果を元に、本研究室で開発を行った流動シミュレーション・モデルによって数値計算をおこない、モデルパラメータを固定しています。
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厳冬期山岳地帯で発生する煙型の雪崩は典型的な表層乾雪雪崩です。このような雪崩は時として大規模な災害をもたらします。従って、煙型雪崩の発生を予測し、その流動特性を理解することは防災の立場から重要です。煙型雪崩は、山岳傾斜面における雪の舞い上がりがきっかけで発生するものと考えられます。そこで、高度な乱流モデルを用いて雪粒子の巻き上げ現象の数値解析をおこなっています。また、雪崩の数値シミュレーション手法の精緻化と室内実験結果との比較をおこなっています。また、煙型雪崩の現地踏査を行い流動シミュレーションを行うことにより、雪崩の規模や雪崩による衝撃力などを推定しています。
波動場に設置された海洋構造物周辺の流れは、構造物周辺の海域環境にのみならず、漂砂による海底地形の変形にも多大に影響することが知られています。本研究では、室内実験によって潜堤や可撓性の海域波浪制御構造物周辺の流れ場を詳細に計測し、波動と周辺の平均的流れ及び乱流特性量について詳細に検討しています。また、境界積分法及びナビエストークス方程式に基づく波動場の数値シミュレーションを実施し、その動態把握もおこなています。
地球環境における水による物質輸送を考える場合、地球の自転による流体運動への影響を考慮する必要があります。系が回転する場合、流れは等圧線に平行(地衡流成分)になるため、水が高いところから低いところに流れるという常識をそのまま適用することができません。本研究では、室内実験及び、数値シミュレーションにより、系の回転が流れに及ぼす影響を調べています。
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海における海水や汚染物質は、潮汐や風等が起因する様々な流れによって移流・拡散します。つまり、汚染物質などの物質輸送を考えるときは、その前にまず海水の流れを把握しておく必要性があります。本研究室では、現地踏査・観測・室内実験結果と比較しながら、プログラムを開発し数値計算をおこない、海の流れや海水・汚染物質の拡散過程を再現・予測し、効果的な環境改善・予測の技術の開発等をおこなっています。
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