Summary of Thesis

2008年度(平成20年度)
修士論文、課題研究(卒業論文)概要

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  1. 平成20年2月佐渡島北部高波被害の解析

  2. 岡本 大

    平成20年2月23日から24日,冬型の発達した強い冬型気圧配置が強まり,高波浪が日本海に上陸した.この波浪で新潟県の佐渡島北部沿岸地域に甚大な被害がもたらされた.特に被害の大きかった鷲崎,北小浦,水津では,暴風による被害が多数発生し,また高波による負傷者や民家・漁港・海岸・漁船などに甚大な被害がもたらされた.甚大な被害が生じた漁港施設等の復旧には多くの時間と労力を要し大変である.漁業地域に住んでいる人々が安心して暮らせるように,漁港施設等の迅速な復旧が求められる.
    本研究では数値計算の中でもすでに実務的に用いられている第三世代波浪推算モデルSWAN(Simulating WAves Nearshore)を用いて計算を行った。計算の対象領域は佐渡島から新潟県沿岸を含む日本海で,まず平成20年2月全体で波浪推算を行う.
    そして,被害のあった平成20年2月23日から24日の佐渡島北部沿岸被災状況の分析を始め,気象・海象データの分析や波浪特性を把握し,波高,波向,周期の状態の検討をし,佐渡島北部高波被害のメカニズムを解析していく.

    最初に波浪推算モデルSWANの新潟県沿岸域における波浪を再現できているか検証するため,波高と波向に周期においてNOWPHAS(全国港湾海洋波浪情報網)の観測値と推算値を比較した.その結果,対象期間において波高,波向,周期の傾向を再現できることを確認した.SWANの推算結果を佐渡島および新潟沿岸域の波浪特性の解析に用いた.
    推算値による波浪再現,平成20年2月23日〜25日の波高,波向,周期は,精度良く再現できてた.日本海をゆっくりと発達しながら通過し,北方からの長周期の波浪が来襲しない場合には,日本海沿岸海域で高波が来襲するが,佐渡島の本土側は半島や佐渡の遮蔽効果で波浪はあまり発達しない.今回被災した日を検証すると,鷲崎漁港,北小浦漁港,水津漁港では南下した高波浪の最大有義波高の波向が鷲崎と北小浦と両津と水津で北北東となっている.波向が北北東のため佐渡島の遮蔽の影響が少なかったこと.波高の周期が長時間だったことから,対象地点の漁港まで波高が大きく減衰せずに漁港施設などに被害をもたらしたことが大きな要因であると思われる.

    要旨( PDF形式, 555kb )


  3. 湖沼に流入する濁水の混合過程に関する解析

  4. 小川 直也

    夏季の温度成層が生じているダム貯水池に洪水による濁水が流入すると,濁水が中層の温度躍層に沿って貫入していく現象が起こる.このような現象を中層密度流と呼ぶ.ダム貯水池の建設に伴い,堆砂問題や濁水の長期化が問題とされてきている.中層密度流はこれまで多くの実験や理論的研究,数値解析がなされているが,PIV計測による内部流速構造の研究例がまだない.PIV計測とは微小なトレーサ粒子を混入することで気体・液体などの流体の流れ場を可視化し,画像処理・画像解析技術を加え,定量的な流れ場の瞬時・多点の速度情報を得る方法である.
    本研究では中層密度流の室内実験においてPIVによる流速計測を行った.これにより,従来,理論的研究や数値解析によってしか研究し得なかった流れ場の流速ベクトルが測定でき,中層密度流現象のメカニズムの解明を行なうことができた.また,数値計算を実施し,画像解析による結果との比較検討を行った.本研究より,乱流特性量であるレイノルズ応力の分布が速度勾配に依存することが認められた.また,乱流のエネルギーに相当する流速変動の2乗平均値の分布についても妥当な計測結果が得られた.また,数値計算と計測結果はよい一致を示した.


    要旨( PDF形式, 333kb )


  5. 新潟県中越沖地震で発令された津波注意報に関する聞き取り調査

  6. 杉本 高志

    わが国では対象地域で想定される津波高さを対象とした津波防災対策が実施されてきた。しかし、いずれもわが国全体の標準的な取り扱いからの観点からというより、むしろ被災地復興の色合いの濃いものであって、決してバランスの取れた対策とはなっていない。しかし、2001年3月から始まった想定東海地震の震源域の見直しや、その後に取り組みが約束されている東南海・南海地震とその津波対策では、その被害の広域性から、標準的な考えを見出すことが必要となっている。
    2007年に発生した新潟県中越沖地震は,発生直後に佐渡島を含む新潟県全域の沿岸に津波注意報が発令され,実際に柏崎,佐渡市で津波が観測された.今回の地震により発生した津波の規模は、幸いにして小さかった為に、津波による被害はほとんど発生しなかったが,過去においては,1964年6月16日に新潟県粟島南方沖を震源として新潟地震が発生し,それにより発生した津波は新潟市で4メートルに達した他,佐渡島や粟島,島根県隠岐島でも冠水被害が出た経験がある。したがって、新潟県沿岸域でも今後津波被害が発生する可能性がある。
    そこで、住民の津波に対する防災意識の現状や、津波災害時の行政の対応などを把握して問題を見出し、実態を表す指標を定量化し、問題に含まれる因果関係を確認、探索することは今後の津波防災において必要であると考え、津波防災に対してのアンケート調査を行った。 調査対象は、海岸から約200mの沿岸域で暮らしている住人とし、出雲崎町の尼瀬から、柏崎市の松波町までにかけての約25kmの領域において行った。対象領域には1433世帯あり、回収数は471世帯である。 得られた回答から、津波に対する住民意識と行政の対応においての現状を把握することが出来た。津波に対する住民意識においては、津波の危険性が十分に住民に理解されていないため、津波注意報が軽視されていることがわかった。また、災害時の行政対応においては、住民から「情報が遅い」、「情報が届かない」、「情報が不明確」と、災害情報の伝達についての不満が多く見られた。以上の結果から、津波の危険性を住民に理解してもらうための策が必要であることと、行政対応においては災害情報の伝達の仕組みを、もう一度検討する必要がある、ということが問題点であり、今後の課題として挙げられる。
    今回の調査によって、沿岸部の住人の津波に対する防災意識の現状と災害時の行政対応を把握し、そこから問題点を提起することが出来た。

    要旨( PDF形式, 321kb )


  7. 浅水系方程式に基づく雪崩シミュレーションモデルの作成

  8. 田中 徹郎

    日本は本州日本海側を中心とした豪雪地帯において,その人口が全体の約2割を占めている.また,国土の約7割が山林であるため,豪雪地帯でも山間部に集落や建造物が点在している.このような地域では厳冬期から比較的温暖な春先にかけて家屋被害や道路閉鎖など様々な雪崩災害が懸念される.雪崩被害を軽減するには運動モデルの構築が重要となる.数値解析により雪崩の運動を再現できれば,その解析結果を防御施設の設計や,ハザードマップ作成に反映させることが期待できる.しかし,従来のモデルには,多くの仮定条件が含まれ,精査の必要なものも多く,計算が複雑化している.そこで本研究では,最も簡単に流体の運動を記述した方程式系である浅水系方程式を用い,仮定条件をあまり必要としない、雪崩シミュレーションモデルの作成を目的として行った.

    基礎方程式については浅水系方程式を基としたものを適用し,そのほかに,細粒子分の移流拡散方程式などの式を加えることによりモデルを構築した.また,計算に用いる基礎方程式が単純な常微分方程式で構成されるため,演算時間が短いという利点も有する.本研究ではモデルを,2000年3月岐阜県吉城郡上宝村神通側水系蒲田川支流佐俣谷で発生した大規模な雪崩に適用し,その適合性を検討し以下の結論を得た.浅水系方程式を基に作成することにより,仮定条件を多く必要としない,雪崩シミュレーションモデルを作成した.また,全領域で同時に二次元解析が可能となり,雪塊同士の相互作用による雪崩への影響が表現可能である.流下挙動については,雪崩が雪を取り込み加速しながら,斜面を流下し,緩勾配斜面へ流入すると,減速するといった流下挙動を数値解析によって表現できる.また,雪崩本体の雪の取り込みや離脱,雪粒子濃度の増減による,雪崩内の雪量の増減や本体形状の変化などの影響を評価することが可能である.

    今後は,発生から停止に至るまでの一連のプロセスを表現可能にさせるため,運動方程式の精査が必要となる.また,解析条件についても総合的に見直し,運動シミュレーションモデルの精度を高めることができれば,本研究で提案したモデルの汎用性をより高めることが期待できる.

    要旨( PDF形式, 124kb )


  9. 洪水流による土砂輸送と地盤標高変化の解析

  10. 野崎 万里子

    近年,日本では激しい日降水量による水害が頻繁に発生している.特に2004年は10個の台風の上陸や集中豪雨など自然災害が多発し記録的な年だったといわれており,集中豪雨によって中小河川では多くの洪水が生じ水害が多発した.新潟県中越地方では2004年7月12日夜から13日にかけて,梅雨前線の活動が活発化し強い雨雲が流れ込んできた.そのため13日朝から昼頃にかけて新潟県中越地方の長岡地域,三条地域を中心に狭い範囲で豪雨が発生した.この豪雨により三条市を流れる五十嵐川や見附市・中之島町を流れる刈谷田川などで短時間に急激に水位が上昇し,新潟県内では6つの中小河川の堤防が11箇所決壊した.特に中之島町の今町大橋下流左岸では13日13時頃に約50mわたって激しく決壊し,家屋の倒壊,浸水による被害が甚大であった.また中之島町では刈谷田川左岸の破堤に伴い広い範囲に土砂が流出し,地域住民は土砂の片付けに困難な状況となるなど,土砂堆積による大きな被害を受けた.洪水のみならずそれによって輸送される土砂の動きの重要性が認識された.
    このような背景から,本研究では洪水波のメカニズムおよび洪水によって輸送される土砂の運動を把握することを目的として,非定常流の二次元数値波動モデルと不均等な土砂輸送を予測するモデルを開発した.研究対象は新潟豪雨による氾濫域の中でも浸水被害が大きく,家屋倒壊が顕著であり,さらに土砂堆積による大きな被害を受けた中之島町を流れる刈谷田川とした.数値モデルは有限差分法であり,計算格子は直交格子とした.変数の配置はスタガード格子とした.また,本モデルを用いて刈谷田川における土砂堆積や侵食の進行,土砂輸送による地盤標高の変化などを予測し,洪水時に河川から供給される土砂の動態を把握した.既往のモデルでは破堤点から洪水流を発生させていたのに対し,本モデルでは河道内部より洪水流を発生させ計算を行った.さらに中之島町の今町大橋下流左岸の破堤点に焦点を置き,越流による堤防の侵食および破堤に至る過程を数値計算に組み込んだ.
    その結果,刈谷田川の破堤を表現し,土砂輸送による侵食や土砂堆積が発生することで地盤標高が変化することを確認した.計算の妥当性を示す根拠としては最大水位および土砂の堆積高のみであるが,十分合致しているものではなかった.計算は格子平均,観測は1点であるため,単純には比較できないが,定性的には現時点では満足できるものであった.

    要旨( PDF形式, 315kb )


  11. 信濃川中流域を伝播する洪水流の解析

  12. 星野 北斗

    近年,時間雨量80mmを超えるような猛烈な雨が頻発し,被害の甚大化,ライフラインの破損による都市機能の麻痺といった状態を引き起こすなど,大きな被害が発生する例が増えている.しかし,治水安全度の着実な向上や質の高い河川管理の構築が求められる一方で、治水・利水対策として重要な役割を持つダムが,地質等の条件や社会的条件の変化等さまざまな理由からいくつかの水系で建設困難な状況になりつつある.このような中、新しい視点からの洪水流の調査・研究が一層重要になっている.そこで近年、議論されているのが「河川自体が持つ貯留効果」についてである.河川にはさまざまな特徴があり、ため池・ワンド・ビオトープ・湿地・氾濫原等といった河川構造物は,自然環境の再生と共に,洪水時に遊水し,下流河道への流量低減を発生させる.また,河川の蛇行や川幅の極端な変化等といった河川形状も洪水時の流れを変化させ,流量に大きな影響を与える.さらには高水敷・低水路河岸沿いの植生や水防林といった河川環境も,連続して繁殖することで,治水上の役割も担っているとされている.
    国土交通省信濃川河川事務所では、「水面形時間変化からの洪水伝播と河道貯留の検証について」という題目で,時系列のピークの低減から信濃川の貯留効果について検討を行っている。カプセル水位計での実測結果と,各流量観測所の過去の出水データから推察された結論が@長岡地区での高水敷の利用による貯留現象,A妙見堰上流の狭窄部による堰上げ効果である.しかし,妙見堰の狭窄部の貯留効果はわずかであると推察されていることから,信濃川中流域においての貯留効果は長岡地区で主に発生していると考えられる.よって本研究では、信濃川中流域を対象に一般曲線座標による平面2次元数値計算を行い、対象区間の洪水流の伝播を把握し、信濃川河川事務所のデータから予測された長岡地区の貯留効果について検討することを目的とした.
    その結果,ピーク流量低減を確認し,長岡地区では,洪水の流量規模が大きいことに比例して高水敷の河積への水の乗り上げが大きくなることを数値解析から示すことができた.また,長岡地区での貯留現象の要因として@河岸段丘地帯から氾濫平野を流下するようになるため,河幅,高水敷が急激に大きくなっていることA河道が単断面から複断面になっていることB勾配が緩やかになっていることが挙げられた.

    要旨( PDF形式, 137kb )


  13. カンボジア沿岸域の流動機構の把握

  14. 前田 祥吾

    現在,カンボジア国内では急速に開発が進められており,GDPの成長率は10%を超えるほどである.沿岸域もその例外ではなく,大規模な開発が計画されているが,カンボジア沿岸域はタイ湾に面しており,万が一カンボジア沿岸域で負荷源が発生した場合,カンボジア沿岸域での環境の変化はタイ湾全体へと影響を与えることが予想される.こういった事態を未然に防ぐために近年では大規模開発の際は環境アセスメントが行われるようになってきているが,カンボジアでは現在まで環境アセスメントは行われていなかった.しかし,カンボジア沿岸域での環境の変化はタイ湾全体へと影響を与えると思われるので,カンボジア沿岸域で開発を行う際は,広範囲での環境アセスメントを行う必要があると考えられる.しかし,環境アセスメントを行う際にはその領域での流動機構を把握しておく必要があるが,カンボジア沿岸域やタイ湾の流動機構は解明されていないのが現状である.よって本研究では,カンボジア沿岸域の開発によるタイ湾全域の環境への影響,並びにタイ湾及びカンボジア沿岸域の流動機構を把握するために,カンボジア沿岸域,及びタイ湾全体の流動機構を把握することを目的とし,2次元数値モデルを用いて潮汐流,及び吹送流の解析を行った結果,以下の結論を得た.

    強制水位としてNAO.99bを用いることにより,潮汐調和定数を入手できない海域においても,詳細な潮汐流シミュレーションを行うことが可能となった.タイ湾では,潮汐流は時計回りの循環流を形成し,カンボジア沿岸域の南側,及びSihanoukvilleの西側を通して海水交換を行っていることを解明した.カンボジア沿岸域,及びSihanoukville付近の平均濃度の時間変動を求めたことにより,両海域では計算開始後13日で濃度が半減し,半年後にはほとんど海水交換が完了していることを解明した.タイ湾においては,吹送流の影響は潮汐流と比較して小さく,吹送流がタイ湾に与える影響は小さいことを確認した.カンボジア沿岸域内の潮汐流を解析した結果,Kaebで流速のピークが3つ現れる,約70×50kmの領域内の左右で流況が大きく異なるなど,複雑な挙動を示すことを解明した.thmei,Kaeb,Angkorの3点で拡散計算を行うことにより,Thmei,Kaebは比較的海水交換性が高く,Angkorは非常に停滞性の強い海域であることを確認した.

    要旨( PDF形式, 213kb )


  15. 津波速報の為の津波発生判断モデルの開発

  16. 能登 兵衛

     津波発生の一番の要因は海底で起きる地震である。そのため地球上で津波の起こりやすい場所は、地震活動の盛んな地域に一致することは当然であり、実際に過去に生じた津波の80%以上が我が国の太平洋岸から千島、アリューシャン列島、アラスカ、メキシコの太平洋岸、加えて南米のペルー、チリ沖にかけての環太平洋地震帯で起こっている。我が国沿岸部も津波により、多くの被害をこうむっており、このため地震と津波の関係性については、これまで多くの学者・研究者が研究してきている。その中でも代表的な例として飯田は、海底で発生する地震により津波は必ずしも発生するわけではなく、津波の規模が地震のマグニチュードMと震央の深さD(km)に依存することを明らかにし、M < 0.017D + 6.42で示される範囲では津波が発生しないことを明らかにした。これによると地震のマグニチュードMが6.4以下では津波が発生しないことになる。
     しかしながら、過去85年間の資料から、津波が発生した地震の震源深さとマグニチュードの関係をプロットすると、従来“津波発生せず”と考えられていた領域内において、多数、津波を伴った地震が発生しているのが見てとれた。また、これらを時系列に見ていくと、飯田らがこの関係性を発表した1950年代においては、おおよそ津波発生時の地震の震源深さとマグニチュードの関係性を表しているといえるが、1960年代〜2000年代にかけて、上記したように、従来“津波発生せず”と思われていた領域内において多数地震活動が記録されたことが分かった。 そこで、本研究においては、津波を伴う地震の震源深さとマグニチュードの関係性をもう一度見直すと共に、新たに、地震の震源深さとマグニチュードから津波の発生を予期することが出来る判断モデルの作成を行い、最小二乗法を用いたXのYに対する回帰直線と、過去に津波を伴った地震のうち最もマグニチュードの小さいM5.9が新しく提案する震源深さとマグニチュードの関係式からどのくらい乖離しているかを百分率で表した乖離率との考え方で新たに式:M = 0.0051D + 6.21を導き出した。この考え方を用いるとM6.21未満の地震については津波が発生しないと言える。

    要旨( PDF形式, 927kb )


  17. 新潟西港の投棄された浚渫投入土砂の移動に関する研究

  18. 吉田 航

    新潟西港は信濃川の河口内部に位置する港であり、交通および経済活動を支える拠点として新潟市の発展に寄与してきた。信濃川は絶えず上流から泥や粘土を主体とした土砂を輸送し、それが河床上に堆積することによって新潟西港の水深が浅くなる、いわゆる航路埋没の問題が顕著である。このため、新潟西港では一年間の総浚渫土砂量は約80万?となっており、そのうち65万?の土砂が海洋投入されている。この浚渫量はわが国の港湾の中でも突出して高いものとなっている。浚渫土砂の投入海域である、新潟西港沖では、海域の海底に土砂が堆積し、徐々に水深が浅くなっており、その環境因子の特性や波・流れによる移動などが高い関心を集めている。
    この現状を踏まえ本研究では、過去から現在までの浚渫海洋投入海域における土砂の移動による地形変化を調査することを目的とした。調査海域は現在浚渫土砂を投入している海域と現時点で確認できる過去に土砂投入を実施していた海域、そして海洋投入海域の周辺海域である。
    解析期間は平成13年度から平成20年度までとして、新潟西港測量図の標高データをデジタイズし、作成したアニメーションにより移動傾向を調査した。その結果、土砂の投入による堆積での地形変化は確認できたが、波の影響による土砂の一方向の移動は確認できなかった。過去の投入海域での堆積土砂の頂点の水深を年度別で比較すると、徐々に水深を取り戻していることが確認できた。したがって、新潟西港沖の浚渫投入により堆積した土砂は、波の影響は受けずに、水深の深い方へと移動していることが考えられる。この地形変化の傾向は拡散方程式の挙動と合致し、適当な拡散係数を与えることによって堆積土砂の移動傾向が予測できることが示された。

    要旨( PDF形式, 435kb )



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