JA0ZRY
長岡技術科学大学 無線部

特小レピータ
3A mode, L-10 channel

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特小レピータとは特定小電力無線機(トランシーバ)を利用した電波中継基地をいいます。

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最終更新日: Apr 13, '06

作成:長岡技術科学大学無線部顧問 犬飼直之 /7K1DBH
E-mail: inu@nagaokaut.ac.jp

[ CONTENTS ]

1. はじめに 5. レピータの利用方法
2. 特小無線で使える便利な機能     6. 交信可能エリアの予測計算・検証
3. 本学のロケーション 7. 本学使用の無線機について
4. 本学レピータの運用目的 8. ライブカメラ・気象情報


  1. はじめに
  2. 長岡技術科学大学無線部 JA0ZRY 特小レピータのページです。

    特定小電力無線 (*1) は”特小”や”特小無線”などの愛称で親しまれています。 その魅力は何といっても、アマチュア無線などのように資格や免許が必要なく気楽に使用することができることで、 近年ではその利便性からレジャーや業務で幅広く活用されるようになりました。
    しかし、この便利な無線も、送信出力に制限があることから、100mくらい離れたり建物の影に隠れたりすると通信が困難になってしまう などの不便な部分もあります。

    (*1) 電波法施行規則 第6条 で特定省電力無線局について規定されています。


  3. 特小無線で使える便利な機能
  4. ■レピータ(電波中継)機能について

    しかし、この特定小電力無線には実は画期的な機能・規格が導入されており、近年、その機能を備えたシステムが広く利用されつつあります。
    これがレピータ(電波中継)機能 (*2)です。アマチュア無線などの世界では既に馴染みの深いシステムですが、 特定小電力無線でもこの機能が使用できることから、広い範囲・分野での運用が可能となりました。

    (*2) ARIB (*3)規格番号RCR STD-20(平成元年4月25日策定)で特定小電力無線局 無線電話用無線設備について規定されています。
    (*3) ARIB: 社団法人 電波産業会 ( Assosiation of Radio Industries and Businesses )


    図-1レピータ機能の概念を示します。図-1上図(レピータ無し)ですと、 少し離れた相手には電波が届きませんが、下図(レピータ有り)のように途中に 電波を中継する機械(レピータ)があると相手に電波が届くようになります。

    図-1 レピータ機能の説明


    ■レピータ設置場所について

    このように中継基地(レピータ)があれば、利用範囲が広がることは理解していただけたと思いますが、実は、この利用範囲は 中継基地のアンテナの状況位置、標高、見晴らし 等)によっても大きく異なります。 図-2にレピータの設置位置の違いにより利用範囲も変化するという概念を示します。 図-2上図(低所のレピータ)のように、中継基地(レピータ)が低い位置や建物などの影にあると、 電波は建物などに遮られ近くからの電波しか受信できず、また、中継した電波も、遠くへ届きません。
    しかし、図-2下図(高所のレピータ)のように、中継基地(レピータ)が高台や建物の屋上など 見通しのいい場所にあると、遠くの電波を受信でき、また中継した電波も遠くまで届くようになります。
    このように中継基地(レピータ)の設置の際には、そのアンテナの状態(位置、標高、見晴らし 等)がとても重要になります。

    図-2 レピータ設置位置の重要性の説明

  5. 本学のロケーション
  6. 本学は、新潟平野を見下ろす長岡市西部の丘陵地帯に位置しており、 アンテナは大学の中でも一番高い 建物の屋上に設置をしています。

    写真-1 レピータのロケーション

    Map-1 新潟県地形および長岡周辺地形拡大

    それにより、アンテナ高と平野部との標高差は実に60m以上に及び、その絶好のロケーションのおかげで、 例えばアマチュア無線の144MHzの周波数帯を利用した移動局との交信であれば、新潟市から越後湯沢に及ぶ新潟県中越地域での交信が可能です。

  7. 本学のレピータ運用目的
  8. JA0ZRY 特小レピータは、そういう環境を利用し、日常の業務活動の補助の他、中越地震などの非常事態時に長岡全域の復旧活動を補助する 電波中継基地として機能させることを目標に運用しています。

  9. レピータの利用方法
  10. 本学のレピータの運用チャンネルはL-10 (*4)、 モードは3A (*5)です。

    レピータの利用方法
    1. 無線機の用意
    2. レピータ機能(半複信中継器使用無線モード)対応の特定小電力無線機(トランシーバ)を用意します。
    3. モード番号の設定
    4. モード番号を"3"(半複信中継器使用無線モード)に設定します。
    5. 周波数帯の設定
    6. 周波数帯を"A"に設定します。
    7. チャンネルの設定
    8. チャンネルを"L-10 "(レジャーチャンネルチャンネル) に設定します (*4) (*6)
    9. レピータと交信し通話の準備をする
    10. PTTキー(通話ボタン)を1-2秒間押し続た後、キーを離します。
      レピータに電波が届きレピータが利用できる状態であれば、スピーカから「ツツ」という音のあとに「ピピ」という音がします。
      これでレピータを使用することができます。
    11. 通話する
    12. PTTキー(通話ボタン)を押し続けながらマイク部に向かって話しをします。
      PTTキーを離すと電波受信状態になり、相手が送信をするとスピーカより相手の声が聞こえます。
      PTTキーのON/OFFを繰り返し通話をします。

    (*4) 製造会社によって呼称が異なりますが、レジャー・チャンネルの1チャンネル を指します(*6)
    (*5) レピータ対応の特小無線機でなければ利用できません。
    (*6) モード"3"、周波数帯"A"、"レジャー1チャンネル"の時の周波数:
          RPT送信周波数:421.8125MHz, TR送信周波数:440.2625MHz , Tone:無し

  11. 交信可能エリアの予測計算・検証
  12. 作成した中継基地(レピータ)を活用してもらう為には、 事前アクセス可能領域・地点把握 して情報提供をする事が有効です。
    そこで、当レピータでも交信可能エリアを検索する事としました。

    交信可能領域を検索する場合、狭い領域の場合には手当り次第に移動して確認をする方法も可能ですが、 広い領域での検索では、 根拠もなくやみくもに動き回るのはこの上ない時間とお金の無駄です。
    そこで、ここでは数値シミュレーションよりアクセス可能地点を検索しました。

    ここでは、まず近地を移動運用して交信可能地点を検索することにより、 電波の伝播形態などの情報を収集し、それから得られた知見を元に交信可能領域の 予測計算を行いました。

    ■近地での通信試験

    ここでは、本学の近くで実際に移動運用を行い、設置したシステムにどれくらい離れた場所からアクセスできるかの試験を行いました。
    方法は、移動中の乗用車の中からトランシーバのPTT(送信ボタン)を押しレピータにアクセスするのかしないのかで 判断をしました。
    結果をMap-2に示します。

    結果ですが、
    北は中之島見附IC付近の国道8号線が刈谷田川を渡る橋付近で交信可能でした。
    南は関越道山谷PA付近(長岡〜小千谷IC間)と、国道17号線の小千谷大橋で交信可能でした。
    また、別の日ですが、弥彦山山頂〜長岡および津南の山〜長岡との 遠地間交信に成功しました。

    これらの結果より、「レピータ局から見通せる範囲」であればほぼアクセス が可能であることが分かりました。

    Map-2 アクセス地点(鳥瞰図版)
    (平成17年10月08日現在)


    ■交信可能領域予測の計算

    通信テストで得られた、「レピータ局から見通せる範囲であればほぼアクセス可能」 の知見を元に、交信可能領域の予測計算を行いました。
    利用した地形データは国土数値情報(50m格子)を利用しました。
    計算座標系は球面座標系を使用しています。平面を扱う直交座標系では図-3,4に示すとおり、 無限遠まで見通せる矛盾や標高の誤差が生じるからです。

    標高を図-4に示すような球面座標系に変換し、 レピータから直線で到達する地点を交信可能地点としました。
    特定小電力無線は出力が小さいので、山での反射・回折効果は考慮していません。

    図-3 球面座標系を使用する理由
    (無限遠まで見えるのは実現象に矛盾する)


    図-4 球面座標系と直交座標系の標高誤差の比較
    (実際には新潟〜長岡間で286mの標高誤差が生じる)

    図-5 座標系変換前後の地形の比較
    (左:直交・平面座標系、右:球面座標系)

    結果を次に示します。
    計算所要時間は、広領域(左図)で40分程度。小領域(右図)で5分程度でした。


    Map-3 新潟県内
    (赤点が交信可能地点)
    (予測結果)

    Map-4 長岡周辺
    (光が当たっているように見える明るい地点で交信可能)
    (予測結果)


    この結果を見ると、
    北方向の新潟方面へは開けていますが、西方向の柏崎、上越方向には 全く飛ばないことが分かります。
    しかし、北端の山形県との県境の山および南端の群馬県・長野県の県境付近 の山からアクセスできる可能性がある事が分かります。

    次に、県内の代表的な山である弥彦山(やひこやま)および妙高山 (みょうこうさん)から長岡レピータまでの断面図を下に示します。
    図より、弥彦山からはアクセスは可能ですが、妙高山からはアクセス不可である事が分かります。


    Map-5 弥彦山〜長岡断面線


    図-6 弥彦山から長岡レピータ
    (球面座標変換後地形)

    アンテナ高のおかげでアクセス可能


    Map-6 妙高山〜長岡断面線


    図-7 妙高山から長岡レピータ
    (球面座標変換後地形)

    ギリギリでアクセス不可


    Map-7 長岡周辺の断面

    図-8 長岡周辺の断面
    (長岡レピータから市街地方面)



    ■新潟県の良好なロケーションの検索計算

    見通し範囲を計算する手法を応用して、新潟県内全域のロケーションを計算し、 どこが良好な場所かを求めました。
    → こちら

    新潟県内で移動運用をする際の、場所選定の参考になれば幸いです。



    Fig-1 ロケーションマップ例
    (新潟周辺、明るい色:良好)

    ■今後の課題

    (1) 計算理論の充実

    これまでの計算では、地表は球面である条件を考慮してはいますが、実際には等価地球半径の効果や フレネルゾーンを考慮しないと、アクセス領域が多少広くなることが予想できます。

    これらの効果は地形の他、温度や湿度や高度などによっても変化をするので、気象条件などにより、 交信可能領域がどのように変動するのかを確認できればいいなとも思っています。

    (2) 計算結果の確認

    今後は、得られた計算結果が正しいのかを実際に移動をしてアクセス試験を行い、計算の確からしさを検証しようと思います。
    特に南北の最遠地からのアクセスが可能かどうかを確認したいと思います。


  13. 本学使用の無線機について
  14. 特定小電力トランシーバー/レピーター
    ALINCO DJ-R20D
    アルインコ(株)

    周波数範囲:422.0500〜440.3625MHz
    チャンネル数:ビジネス11ch & レジャー9ch
    送信出力:10mW

    少し前までは、特小無線機はレジャー用単信9チャンネル機又はビジネス用単信11 チャンネル機など、別々の機種として製造・使用されていました が、最近は両方のチャンネルを搭載し、新たにペアチャンネルを 搭載した無線機が製造されています。
    その総チャンネル数は47チャンネルにもなります。
    このチャンネルが統合・拡張された問題で、最近ではチャンネルの呼び方の 問題が生じているようです。例えば"レジャーの1チャンネル"の様に、同じ周波数の チャンネルを示す場合でも、製造会社によって呼称が異なる場合があるようです。
    機械を購入し使用するユーザも混乱を生じている様なので、できるだけ早期の統一を望みます。

    写真-2 防水加工の工夫

    写真-3 左:アンテナ通し穴、右:電源供給端子

    写真-4 パッケージ完成


    写真-5 パッケージ設置状況


  15. ライブカメラ・気象情報
  16. Electrical Eng. from Astro Dome.
    (Back view is NAGAOKA Downtown)

    This image is reloaded every 60 seconds.
    Student Dormitory from Civil Eng.
    (Back view is Mt.Hakkai)

    This image is reloaded every 60 seconds.


    Weather Information

    NAGAOKA University of Technology
    ( This image is reloaded every 5 minutes. )


    Weather Information
    (Niigata, Japan)
    (The Weather Underground, Inc.)


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